Description

新たに入庫したフォード・RS200ストラダーレをご案内します。

　1983年から新たに設けられたグループBというラリー・カーのレギュレーションは、ツーリングカーを主体としてほぼ無制限ともいえるべき構造変更が認められ、極めて過激な車両を生み出したカテゴリーでした。各メーカーがしのぎを削って、軽量・ハイパワーのラリーカーを生み出し、安全性なども軽視されたそれらの車両は恐ろしいほどのパワーを持ち、競技中に数多くのアクシデントが発生しました。結果的には観客・ドライバーを含めて多くの犠牲者を出した事により、グループBそのもが1986年には中止されるという事態にまで発展してしまいました。各メーカーそんな激しいパワー競争の中、フォードが送り出しだグループB専用車とも言うべきクルマがこのRS200です。

　エンジンはBDTと呼ばれるコスワースチューンによる4気筒、1.8L／4ヴァルブ、ギャレット製ターボチャージャーを介してファクトリーカーでは500馬力近くまでパワーを絞り出し、このストラダーレでも300馬力を得ています。４WDシステムは世界初のミッドシップ・トランスアクスルと呼ばれる方式で、ロードモード（リヤのみ駆動）、その他、路面の状況により2タイプの4駆モードの3種が選択できるようになっています。そのシステムを使用した凄まじい加速力は、ファクトリーカーでは時速100キロまで2.1秒で駆け抜けギネスブックにも登録されるほどでした。最高の技量を持つラリードライバーでもコントロールは用意ではなく、僅か1トンの車重と短めのホイールベースと相まって乗り熟すのは容易ではなかったと言われています。

　印象的なボデイーはグラスファイバー製でデザインはカロッツェリア・ギアが担当。アルミ製のモノコック構造でミッドシップ、鋼管製サブフレームによりサスペンションを支持、エンジンは究極まで低位置に搭載されるためオイルダンクはドライサンプ方式となっています。ボデイーの各所にフォードシエラのパーツを流用しており、一切の無駄を省いたそのシルエットは戦闘的です。何しろラリーで勝つことのみを考えられて生み出されて来たクルマなので、そのコンセプトがデザインにも表れています。僅か3年間で200台少々が造られ多と言われていますが、日本国内でその姿を見かけることは殆どと言ってありません。また、ナンバーを取得して走行可能なクルマとなればおそらく数台も無いでしょう。また、ストラダーレとはいえそのまま公道を走行するためには、やはりそれなりにアップデートする必要もあります。

　当車両も普通に（と言っても相当過激だが）走行できるように各所に手を加えてあります。エンジンは更に耐久性を増す内容で完全にOHされています。燃料システムから点火系まで入念に作業されており、ラジエーターを含む冷却系も更にアップデートされています。勿論それに伴い電装系もハーネスからオルタネーターのアップデート、クラッチもツインのOS製に変更、ブレーキシステム、ダンパーを含む足回りも交換されています。それ以外にもここでは明記しきれないほどの整備・作業を実施されており、これは先にも述べたように、ストラダーレとはいえ、現車も350馬力以上を発生しており、現代の路上を走行するにはオリジナルのままではやはり不安が残るところです。それ故に、前オーナーが多額の費用を掛けて公道を走行できるように仕上げた、まさに渾身の1台と言えます。

　また、昨今はグループBのロードカー全体の価格が高騰しており、このRS200も御多分に漏れず年々その販売価格は上昇を続けています。海外などでは既に1億円以上の取引事例もあり、今後もその動向が注目されています。

　もう2度と来ないであろうあの過激なロードカーが造られた僅かな時代、そんなグループBカーにご興味がおりでしたら、是非ご覧になって頂きたい1台です。